虫歯と並んでお口の代表的なトラブルとして知られている「歯周病」。
その原因は磨き残しだと認識している人は多いでしょう。しかし、それだけではありません。根本的な原因として、歯並びも大きく関係しているのです。
今回は、歯並びが悪いと歯周病になりやすくなる理由を詳しく解説するとともに、その対策方法や歯並びと歯周病との相関関係についてもお話いたします。
歯周病になりやすい歯並びも紹介していますので、歯並びが気になっている方はぜひチェックしてみてください。
歯周病のリスクをあげる原因
実は歯周病の原因はたくさんあります。主な原因を紹介しますので、チェックしてみてください。
歯垢(プラーク)
歯周病の直接的な原因は、歯垢の中にいる「歯周病菌」です。歯垢は食べカスとは異なり、お口の中の細菌が食べカスをエサして作り出した代謝産物のこと。
歯垢の中には多くの種類の細菌が増殖しており、毒素を放出して虫歯や歯周病を引き起こしています。
歯垢はネバネバしているのでうがいなどでは落とせず、しっかりと歯ブラシでこすり落とす必要があります。さらに、歯垢は時間が経つと歯石となります。歯石は表面がザラザラしていてさらに歯垢が付着しやすくなる上、歯ブラシでは除去できないのでさらに厄介です。
つまり、磨き残しが多いと、歯垢や歯石が付きやすくなり歯周病のリスクが上がってしまいます。
詰め物やかぶせ物(補綴物)
詰め物・かぶせ物(補綴物)と歯との間にすき間や段差があると、そこに歯垢がたまりやすくなります。すき間や段差ができてしまう主な要因は以下の通りです。
- そもそも初めから合っていなかった
- 経年によって歯や補綴物がすり減った
- 歯ぐきが痩せた
- 虫歯ができた など
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、歯や補綴物がすり減ったり欠けたりしやすいので注意が必要です。
喫煙
タバコは、全身の健康はもちろん、歯周病への悪影響についても明らかになっています。具体的には以下の通りです。
- ニコチンが血管を収縮させることで血行不良となり、歯ぐきに十分な栄養や酸素が行き渡らなくなる。その結果、歯周病菌に抵抗する力が弱くなる。
- 歯の表面に付着したタールの粘着力によって歯垢がつきやすくなり、細菌の温床となる。
- タバコの有害物質を除去するために白血球が働いてしまうため、歯周病菌に対応できなくなる。つまり、免疫力が下がる。
- 一酸化炭素によりお口の中の酸素濃度が下がり、歯周病菌が繁殖しやすくなる。※歯周病菌は嫌気性菌と言い、酸素が少ない環境のほうが繁殖しやすいという特徴がある。
- 血行不良のため歯ぐきが腫れたり出血しづらく、歯周病の初期段階で気づくことができない。その結果、症状が悪化しやすい。
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全身疾患
歯周病は全身疾患やその治療薬とも深い関係があります。
歯周病になりやすい全身疾患には以下のようなものがあります。これらの疾患は、免疫力が低下したり体内の炎症反応に影響を与えるため、歯周病を発症・悪化させるリスクを高めます。また、歯周病があることで疾患の悪化もしやすいです。
- 糖尿病
- 心血管疾患(心臓病や動脈硬化など)
- 呼吸器疾患(肺炎や慢性閉塞性肺疾患など)
- 骨粗しょう症
- 関節リウマチ
- 免疫不全疾患
- 肥満
特に糖尿病は、歯周病の発生リスクが高いだけでなく進行が早まることも明らかになっています。歯周病は糖尿病の第6の合併症とも言われているほど。さらに、歯周病の治療を行うと糖尿病の改善にもつながることが分かっており、相関関係にあるとされています。
また、抗てんかん薬や高血圧の薬、免疫抑制薬などの中には、歯ぐきを肥大させる副作用がある薬もあります。歯ぐきが腫れていると歯垢がたまりやすいので、丁寧なケアを心がけるなど注意が必要です。
口呼吸
口呼吸をしていると、お口の中の唾液が乾いてしまいます。唾液が少なくなると、抗菌作用やお口の汚れを洗い流す作用などが失われるため、細菌が繁殖しやすくなってしまうのです。そのため、歯周病はもちろん、虫歯や口臭といったお口のトラブルが起こりやすくなるでしょう。
関連記事:口呼吸はデメリットだらけ!歯列矯正で治せる?歯並びとの関係も解説
咬合性外傷
咬合性外傷とは、過剰な噛む力によって一部の歯や歯の周りの組織(歯ぐきや歯槽骨、歯根膜など)がダメージを受けてしまう病態です。
食事の時や歯ぎしりをした時に、特定の歯が強く接触することで、その歯に負担がかかり、その部位で歯周病が進行する原因となってしまいます(早期接触、咬頭干渉と言います)。
これらはもともとの歯並びや詰め物・かぶせ物の影響で、噛み合わせに問題がある場合に起こりやすいです。
関連記事:噛むと痛いのは咬合性外傷かも!?歯並びが関係しているって本当?原因や予防法まで詳しく解説!
歯並び
実はここまででお話ししていた、磨き残しによる歯垢や口呼吸、咬合性外傷は、歯並びに問題があると起こりやすいのです。
さらに、歯並びや噛み合わせが悪いと十分に咀嚼できていない場合が多く、栄養の吸収率が悪かったり、よく噛めないので唾液の分泌が減って歯周病のリスクが上がります。
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ホルモンやストレスなど
歯周病は、ホルモンバランスが崩れると悪化しやすいです。特に女性ホルモンとは大きな関連がることが分かっています。
思春期や月経前後、妊娠中はホルモン変動が大きく、歯ぐきが腫れて出血しやすい状態になります。その結果、歯肉炎や歯周病が発生しやすくなるのです。特に妊娠中は歯周病を放置すると早産や低体重児のリスクが高まることが報告されていますので、十分な注意とケアが必要となります。
更年期以降はホルモンの減少により骨密度が低下したり、お口が乾燥しやすくなることから歯周病のリスクが上がります。
また、ストレスがかかっている場合にも、免疫力の低下や炎症物質の分泌により歯周病になりやすくなることが分かっています。
歯周病になりやすい歯並び
歯並びが悪いと、さまざまな歯周病のリスクが高くなります。特に気をつけたい歯並びをご紹介しますのでチェックしてみてください。
※歯周病は生活習慣や清掃状態などが深く関連していますので、以下の歯並びだと必ず歯周病になるという訳ではありません。
ガタガタ(叢生)
叢生(そうせい)とは、歯が綺麗に一列に並ばず、ガタガタに重なり合って生えている状態のこと。歯並び全体が凸凹していたり、重なっている部分があると歯ブラシが行き届かず汚れが残りやすくなるため、歯周病のリスクがあります。
また、歯並びがガタガタしていると全体の噛み合わせも整っていないことが多いため、一部の歯への負担も大きくなりやすく、限局的な歯周病が発生することもあるでしょう。
関連記事:叢生とは?歯列矯正の費用と期間、症例写真をご紹介。非抜歯でも治療できるって本当?
出っ歯・受け口・口ゴボ
出っ歯・受け口・口ゴボといった歯並びの場合、前歯が大きく前に出てしまっていることで、口が閉じづらいことがあります。口が閉じづらいと口の中の唾液が乾いて細菌が増殖しやすくなるため、歯周病のリスクが上がると言えます。
また、前歯の噛み合わせが悪いことで一部の歯や歯ぐきに負担がかかりやすいことでも、歯ぐきの炎症や歯周病の進行を引き起こす可能性があります。
関連記事:
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すきっ歯
歯と歯の間に隙間があいていると、食べカスがはさまって歯ぐきを刺激したり、食べカスも残りやすいため歯周病が発生しやすいです。
また、すき間があいている部分の歯に噛む力の負担がかかっていることもあります。
関連記事:すきっ歯は歯列矯正するとどう変わる?費用の負担を減らすコツもご紹介
過蓋咬合・開咬
噛み合わせが深すぎたり、逆に一部に噛み合っていない部分があると、特定の歯や歯ぐきに負担が集中しやすく、歯周病のリスクが高まることがあります。
また、前歯部が開咬だと口が開いた状態になりやすいため、口が乾燥して細菌が繁殖することも多いです。
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歯並びが悪い人の歯周病対策
歯並びが悪いと歯周病のリスクが高まるため、よりしっかりと対策をすることをおすすめします。
丁寧なお口のケアにこだわる
歯並びが悪いと歯ブラシだけでは汚れが残ってしまうことが多いため、フロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどを使って丁寧にブラッシングを行うことが何よりも大切です。
加えて、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)や塩化セチルピリジウム(CPC)、グリチルリチン酸ジカリウムなど歯周病の発生や悪化を防ぐ薬効成分が含まれた歯磨き粉やジェルなどを利用するのも効果的。
目的別の詳しい歯磨き粉の薬効成分については、こちらのコラムにまとめましたのでぜひ参考にしてみてください。
関連記事:歯磨き粉の正しい選び方を解説!成分によって効果にどんな違いがあるの?
定期的な歯科検診とプロフェッショナルクリーニング
丁寧に歯磨きをしているつもりでも、どうしても自分だけではお口の汚れを完全に除去するのは非常に難しいです。歯並びが悪い場合はなおさら。
そのため、定期的に歯科医院での検査やクリーニングをうけましょう。歯科医院のクリーニングでは、専門の技術を持った歯科衛生士によって、セルフケアでは落とせない歯ぐきの中の汚れや歯石を除去し、歯の表面を磨いて汚れを付きにくくしてくれます。
さらに、歯磨きの仕方についての指導やアドバイスももらえますので、ブラッシングテクニックも向上します。
また、万が一歯肉に炎症が起きていても、早期に発見をすれば歯周病にまで悪化する前に治療を受けることもできるでしょう。歯科検診は、3~6ヶ月ごとに受けるのがオススメです。
生活習慣や食習慣の見直し
不規則な生活や喫煙、ストレスは、免疫力を低下させ歯周病のリスクを高めます。できる限り規則正しい生活や十分な睡眠を心がけましょう。中でも、禁煙に取り組むことは歯周病予防にかなり効果的です。
また、食事も栄養バランスよく、しっかりと噛んで食べることが歯や歯ぐきの健康にとって非常に大切。ダラダラ食べることや、お菓子やジュースをちょこちょこ口に入れることも、歯周病や虫歯のリスクを上げてしまいますので、食事のリズムも整えることがおすすめ。
歯列矯正をする
歯列矯正が見た目の改善だけでなく、歯周病の予防につながる理由は以下の4つ。
- 歯磨きがしやすくなって磨き残しが減る
- 噛み合わせが整うことで咬合性外傷を防いだり、よく噛むことができるようになる
- 正しいかみ合わせになることで口呼吸の改善につながる
- お口の健康に対する意識が上がる
まず、歯並びが良くなって重なりやデコボコがなくなれば、歯磨きが非常にやりやすくなり、磨き残しを減らすことができます。
正しいかみ合わせでよく噛み、口呼吸を改善することによって唾液の分泌を促すことができれば、歯周病の予防効果もアップするでしょう。
そして何より、歯並びの見た目が良くなると、キレイな状態をキープしたいと思うようになり自然とお口の健康への意識が上がる人が多いです。食習慣に気を使ったり、歯磨きの時間や頻度が増えたという声があります。
歯列矯正の方法と費用
歯列矯正の方法は主に「ワイヤー矯正」「マウスピース矯正」があります。
<ワイヤー矯正>
ワイヤー矯正は、歯にブラケットと呼ばれる金属の装置を接着してその間にワイヤーを通し、ワイヤーを調整しながら歯を動かしていく方法です。基本的にどんな歯並びにも適応可能なことが特徴(骨格に問題がある場合には適応できないこともあります)。
ただし、ワイヤー矯正は常に歯に装置が付いているので、食べ物が挟まりやすかったり、丁寧に歯磨きしないと矯正中の磨き残しや歯ぐきの炎症が起こりやすいというデメリットも。
装置を装着する場所やワイヤー・ブラケットの色などで以下の3つに分かれます。
- 表側矯正:最もスタンダードな治療方法で、歯の表側にワイヤーを装着
- 白色矯正:歯の表側に半透明のブラケットや白いワイヤーを使用することで目立ちにくくする治療方法
- 舌側(裏側)矯正:歯の裏側に装置をつけるので目立ちにくい。ドクターの高い技術力が必要
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、患者さんごとにカスタマイズされた透明なマウスピースを、1日20~22時間装着し、1~2週間ごとに交換することで歯を動かします。目立ちにくいため周囲にバレないように矯正したい方にオススメです。
マウスピースを取り外していつも通りのブラッシングができるので、お口の清潔を保ちやすいこともメリット。
ただし、マウスピース矯正が適応ではない歯並びもあるため、歯科医にきちんと診断してもらうことが必要となります。
歯列矯正の費用
費用面については、マウスピース矯正の方がワイヤー矯正に比べて安く済む傾向があります。矯正治療ごとの治療費の目安は以下のとおりです。
マウスピース矯正 | ワイヤー矯正 | 部分矯正 | ||
表側矯正 | 白色ワイヤー矯正 | 裏側矯正 | ||
10~130万円 | 60~150万円 | 80~140万円 | 100~170万円 | 10~70万円 |
※費用はだいたいの相場であり、歯並びの状況によってこの限りではありません。難しい症例ほど費用は高くなります。
関連コラム:
私の場合は歯列矯正でどうなる?
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インタビュー・体験談
歯周病があっても歯列矯正できる?
歯周病があっても、歯周治療を完了すれば矯正することが可能です。
歯周病がごく軽度の場合は、歯周治療と並行しながら矯正できることもあり、ケースバイケース。
歯列矯正は歯に強い負荷をかけて歯を動かします。もし、歯周病があるのに放置して矯正を始めた場合、歯周病の炎症が強くなって悪化してしまう可能性があります。歯周病が進行すると、歯ぐきが下がるだけではなく、歯を支える骨がなくなるので最悪歯が抜けてしまうことも。
歯列矯正を始める前に歯周病があるかどうか、歯科医師の診断が必要になります。
矯正治療前に歯周病があると診断を受けた場合は、歯周治療をしてから歯列矯正を始めるようにしましょう。
マウスピース矯正は装置を取り外して歯磨きすることが出来るため、歯周病のリスクが高い方におすすめしたい矯正方法です。歯並びが良くなると、歯周病のリスクも下がります。
関連記事:歯周病があってもマウスピース矯正はできる?矯正中は歯周病になりやすい?予防するコツもご紹介
まとめ
歯並びは見た目だけでなく、歯周病のリスクにも大きく影響します。なぜなら、歯並びが悪いと磨き残しによる歯垢や口呼吸、咬合性外傷による歯ぐきへのダメージが起こりやすいからです。
歯並びが悪い場合、歯周病を防ぐには丁寧なお口のケアや規則正しい生活習慣・食習慣などが大切。根本から歯周病のリスクを減らしたい、口腔ケアの効率を良くしたいという方は、歯列矯正を行うことが非常に効果的でしょう。
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・歯の動きやすさには個人差があります。
・正しい装着方法で決められた時間以上装着しない場合は治療期間が長くなる可能性があります。
・咬合、歯肉退縮、歯根吸収等が発生する可能性があります。
・矯正箇所が元に戻る(後戻り)場合がありますので、治療完了後は後戻りを防ぐため、保定装置の装着が必要になります。
・装置装着後と通院における装置調整後は1~3日ほど痛みを伴うことがあります。
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