家族にいびきや睡眠中に呼吸が止まっていることを指摘されると「睡眠時無呼吸症候群」なのでは?と心配になりますよね。
実は日本人は欧米人に比べて、アゴの形や歯並びが睡眠時無呼吸症候群のリスク要因となっているケースが多いと言われています。
では具体的に、どんな歯並びだと睡眠時無呼吸症候群になりやすいのか、歯列矯正で治るのかについて、その他の睡眠時無呼吸症候群の治療とあわせて解説します!
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態を1時間で5回以上(または一晩に30回以上)繰り返すと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されます。日本人では小児の1~2%、中年期の2~15%、老年期の20%以上の人が睡眠時無呼吸症候群に悩んでいると言われています。
睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸や低呼吸以外にも、以下のような症状もみられることが多いです。
- いびき
- 日中の眠気や倦怠感
- 起床時の頭痛や疲労感
- 記憶力の低下
- 夜中の覚醒
- 気分の落ち込み
呼吸が停止していると、体内の酸素が不足してしまいます。すると心臓は、必要以上に心拍数をあげて酸素を確保しようとするのです。その結果、特に心臓などの循環器に大きな負担がかかり、高血圧や脳卒中、心筋梗塞といった病気や突然死のリスクも高くなります。
また、日中の眠気や倦怠感によるさまざまな事故も問題視されており、決して軽視できない病気なのです。
適切な治療を受けることでこうしたリスクの回避につながりますので、少しでも気になる症状があれば決して放置しないようにしましょう。
原因は?歯並びと関係あるの?
睡眠時無呼吸症候群は「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」と「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」の2種類があって、それぞれ原因が異なります。
①中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
中枢性の場合は、脳内にある呼吸中枢が何らかの影響で正常に働かなくなることで起こります。
呼吸中枢に異常が生じる原因としては、心不全や脳卒中、腎不全などが報告されていますが、まだまだ解明されていない部分が多いです。
②閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
閉塞性の場合は、気道の一部または全てが塞がれてしまうことによって起こります。睡眠時無呼吸症候群の大多数はこの閉塞性によるものです。
気道を狭めてしまう主な原因は以下の5つ。
- 肥満で首周りに脂肪がついていたり、舌が大きくなっている
- 扁桃やアデノイドの肥大、鼻・ノドの病気、アレルギーがあって、軟口蓋がノドのほうに落ち込みやすくなっている
- 加齢でノドや舌の筋力が低下し、横になったときに舌がノドのほうに落ち込みやすくなっている
- 口呼吸や低位舌で、舌がノドのほうに落ち込みやすくなっている
- 生まれつきもしくはアゴの成長不足によって、下あごが小さかったり後退している。もしくは舌が大きくて下あごに収まりきらないため、ノドのほうに落ち込みやすくなっている
これらのうち「4.口呼吸や低位舌」「5.下あごの後退」は歯並びと大きく関係します。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい歯並び
下あごが小さい、過蓋咬合、重度の叢生
下あごが小さかったり後退している歯並びや、噛み合わせが深い歯並び(過蓋咬合)、ガタガタがひどい歯並び(叢生)だと、口の中の容積が小さくなって、舌がノドのほうに押し出されやすくなります。その結果、気道が塞がりやすくなるため閉塞性の睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなってしまう場合があるのです。
特に現代は昔に比べてあまり噛まない食事が増えたことで、アゴの発育を悪くし、睡眠時無呼吸症候群になりやすくなっていると言えます。
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出っ歯、開咬
下あごが後退していることによって相対的に出っ歯になっている場合、舌がノドのほうに押し出されて気道が塞がりやすくなります。
また、出っ歯や開咬の歯並びだと口が閉じにくい傾向があります。口を開けたまま寝てしまうと、下あごは重力の影響を受けてノドの方に後退し、同時に舌も落ち込んで気道が塞がる原因に。
受け口
受け口の方の中には「低位舌」になっている場合があります。
低位舌とは、通常上あごの裏にくっついている舌の位置が、上あごから離れてしまっている状態のこと。受け口に限らず、低位舌だと気道が狭くなりやすく、横になったときに舌がさらに落ち込んで気道を塞いでしまうことがあります。
関連コラム:受け口は歯列矯正で治るの?タイプ別の治療方法をご紹介!
私の歯並びはどんな状況?どんな治療が必要なの?
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睡眠時無呼吸症候群の治療方法と費用。歯列矯正で治る?
まず睡眠時無呼吸症候群と診断を受けるためには検査が必要です。検査は耳鼻科や呼吸器内科、専門クリニックなどで受けられ、費用は簡易検査であれば3,000円ほど、精密検査を受ける場合は1~5万円程かかります(保険適用3割負担の場合)。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法はさまざま。 原因や症状ごとに適する治療方法が異なるため、十分に医師と相談することが大切です。場合によってはいくつかの治療法を併用することもあります。
ここでは一般的な治療方法と費用についてご紹介します。
耳鼻科や専門医による治療
CPAP(シーパップ)療法(持続陽圧呼吸療法)
CPAP療法は軽度~重度の睡眠時無呼吸症候群の方にも効果があり、多くの病院で採用されています。
専用の装置から鼻へマスクを装着し、空気を送り続けることで気道が塞がるのを防ぐ治療方法です。空気を送る圧力は、病状・状態に応じて医師が処方します。
ただし、CPAP療法は対処療法であるため、継続的な治療が必要。また、鼻から空気を送り込むので、鼻炎や副鼻腔炎など鼻の通りを悪くする病気があると、十分に効果が得られない可能性も。
人によっては鼻が乾いたり機械の音や空気圧に違和感・不快感を感じることもあります。
費用はCPAP装置をレンタルするのに月額5,000円程(保険適用3割負担の場合)、加えて月に1回の通院費用がかかります。
鼻チューブ(ナステント)
ナステントは、12㎝ほどのチューブを鼻からノドに挿入し、空気の通りをスムーズにして気道が塞がれるのを防ぐ装置です。長さや太さに種類があるため、ご自身に合ったものを選択します。
CPAP療法をするほどでもない、ごく軽症の場合に適しています。
ナステントはコンパクトでディスポーザブルのため持ち運びやすく、旅行など外出時にも活用できます。
費用は1箱7本(一週間分)で約3,000円程。
外科手術・レーザー治療
気道を塞ぐ原因(扁桃やアデノイド肥大、軟口蓋と口蓋垂など)を除去して空気の通りをよくするために、外科手術やレーザー治療をする場合もあります。
術後数週間は食べ物が飲み込みにくく、痛みや異物感を感じるなどのダウンタイムがあります。
最近では、日帰りでの治療が可能な場合もあったり、非切除のレーザー治療なども開発されています。
費用は必要となる術式やクリニックによって異なりますが、おおよそ3~4万円程であることが多いです。
スリープスプリント(オーラルアプライアンス)
スリープスプリント(オーラルアプライアンス)と呼ばれる専用のマウスピースを就寝中に装着する治療方法。基本的にマウスピースの作製は医科で睡眠時無呼吸症候群と診断された後、歯科で行います。
まず患者さんごとに歯型をとり、オーダーメイドのマウスピースを作ります。歯列矯正やスポーツ用のマウスピースとは異なり、下アゴが4~7mmほど前に出るような位置で上下を固定した形状なのが特徴。これによって気道を広げ、下あごや舌がノドに落ち込んで気道を塞ぐのを防ぎます。
定期的に歯科へ通院してマウスピースの調整を行いながら、適宜医科にて症状の診察を行うことが多いです。
ただし、虫歯や歯周病などがある場合は、先にそちらの治療を行う場合があります。顎関節症があったり重度の歯周病や歯が少ない方などは、マウスピースの利用自体が出来ないことも。
また、抜歯など歯の治療をしたり、マウスピースが破損した際には再作製が必要。
費用はマウスピース作製費用に約20,000円ほど(保険適用3割負担の場合)かかり、加えて通院費用が別途かかります。
歯列矯正・外科矯正
口呼吸や舌が落ち込みやすいと睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。その原因が歯並びにある場合、歯列矯正で歯並びや噛み合わせを整えたりアゴを広げることによって、症状の緩和を図ることもあります。
歯並びのアーチが狭いせいでお口の容積が小さく、舌が収まらなくなっている場合には歯並びのアーチを広げるための補助装置(急速拡大装置や緩徐拡大装置、アンカースクリューなど)を併用することも。
また、骨格的に問題がある場合には外科矯正が必要になる場合もあります。
費用については歯並びの状態によって大きく異なりますが、睡眠時無呼吸症候群になっている場合には歯並びの乱れも中等度以上であることが予測されます。おおよその目安は以下の通り。
|
ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 | 外科矯正 |
治療期間
(保定期間を除く) |
約1~3年 | 約1~2年 | 約2~3年 |
費用 | 約70~150万円 | 約50~130万円 | 約150万円~300万円
(自費診療の場合) |
※これらはあくまで目安であり、治療の期間や費用は個人差があります。
関連コラム:外科矯正ってどんな治療?リスクは?普通の歯列矯正と何が違うの?
ただし、必ずしも歯列矯正のみで睡眠時無呼吸症候群が治るというわけではなく、他の要因も含めて多角的に診断・治療を行う必要があります。
生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群の状態には、生活習慣が関わっていることが多いです。すでに専門的な治療を受けている人もそうでない人も、まずは生活習慣を見直してみることをおすすめします。
具体的なポイントは以下の通りです。
- 体重を減らす(肥満が原因の場合)
- ストレス解消法を見つける
- タバコやアルコール摂取を控える
- 枕の形状を自分に合ったものにする
- 睡眠薬や精神安定剤などの量について医師と相談する
- 口が開きっぱなし、低位舌の改善
歯並びに問題がなくても、お口周りや舌の力が弱ってしまっていると、就寝中にも口が開いたり、舌が落ち込みやすくなります。
食事をよく噛むことや、舌を正しい位置につけておくこと(下図参照)を日常的に意識するだけでも筋力アップにつながります!
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睡眠時無呼吸症候群と歯列矯正 よくある質問
睡眠時無呼吸症候群は自力で治せる?
睡眠時無呼吸症候群は、軽度であれば生活習慣を見直すことで改善する場合もあります。また、市販の鼻テープやマウステープで良くなる可能性も。
ただし、睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度は自己判断をするのは難しく、場合によっては症状を助長させてしまう恐れもあります。まずは医療機関で診断を受け、正確に状態を把握することをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群を治したい時、まず何科にかかればよい?
結論から申し上げると、まずは耳鼻科や呼吸器内科、いびきや睡眠を専門としているクリニックなど医科の外来を受診されることをおすすめいたします。
なぜなら、睡眠時無呼吸症候群の検査・診断は医科で行うからです。歯科で発見されたとしてもスリープスプリントの作成は医科での診断を受けてからになります。
ただし、歯並びや噛み合わせを治療するために歯列矯正を受ける場合には睡眠時無呼吸症候群の診断は特に必須ではありません(場合によっては歯科医師から医科での診断を勧められることもあります)。
その場合、あくまで目的は噛み合わせを整えることであることであって、睡眠時無呼吸症候群の治療ではないことをお忘れなく。
歯列矯正が原因で睡眠時無呼吸症候群になることはある?
口の中の容積が小さくて舌がノドへ落ち込んでしまうと睡眠時無呼吸症候群になりやすいです。
すなわち、歯列矯正で歯を並べるために歯並びのアーチを小さくしすぎたり、下の歯並びや下あご自体の位置を大きく後退させた場合、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状がでる可能性もあるといえます。
特に抜歯矯正や外科矯正では口の中の容積がかなり変わるので、慎重に判断しなければなりません。見た目だけを整えればよいというのではなく、アゴやノド・舌の状態、口周りの癖なども含めて総合的に診査した上で、適切な治療計画を立ててもらうことが大切です。
関連コラム:歯科矯正による口元の引っ込みすぎはどう防ぐ?後悔しないために気を付けるポイントや抜歯矯正についても解説
まとめ
睡眠時無呼吸症候群の原因や病態は、非常に多岐にわたります。
歯並びが要因の一つになっていることもあり、歯列矯正はリスクの軽減には有効です。しかしながら、必ずしも歯列矯正だけで改善するというわけではありません。
自己判断せずにきちんと、いびきや睡眠を専門としているクリニックなど医科の外来専門的に検査・診断をしてもらい、正しいアプローチをしていくことが治療のカギとなります。
ご自身の歯並びや噛み合わせが気になる場合は、歯並びの専門家にチェックしてもらいましょう!アットスマイル矯正では、無料で歯科医師と相談できる機会をご用意していますので、ぜひ一度じっくりお話ししてみてください。
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関連コラム:歯列矯正は安くなる?矯正費用の負担を減らす方法5選!貯金無しでも始めたい人は必見!
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治療内容:透明なマウスピースによる目立ちにくい歯列矯正です。
※千円以下の端数がある場合は、切り上げています。
※費用は治療当時の料金となります。
※自由診療となり保険は適用されません。
※歯並びによってはマウスピースによる治療が出来ない場合があります。
主なリスクと補足事項:
・歯の動きやすさには個人差があります。
・正しい装着方法で決められた時間以上装着しない場合は治療期間が長くなる可能性があります。
・咬合、歯肉退縮、歯根吸収等が発生する可能性があります。
・矯正箇所が元に戻る(後戻り)場合がありますので、治療完了後は後戻りを防ぐため、保定装置の装着が必要になります。
・装置装着後と通院における装置調整後は1~3日ほど痛みを伴うことがあります。
・歯の移動が大きい症例などには不向きです。
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