外科矯正とは、外科手術を伴う歯列矯正の事です。
アゴの骨切り手術によって骨格の異常を改善し、歯列矯正を行うことで噛み合わせを治療します。口元や顔貌が劇的に変化する一方で、全身麻酔の手術を行うためダウンタイムや後遺症のリスクも。
この記事では外科矯正について詳しく解説していきます。
外科矯正が必要なのはどんな人?
出っ歯や受け口など歯並びが悪い場合、歯列矯正で対応することが一般的です。
ただし下記のように骨格に重度の問題がある場合、歯列矯正で歯並びをキレイにするだけでは上手く噛めない可能性があります。
- 上アゴ・下アゴの片方が大きい
- アゴの成長が左右対象でない
- アゴの位置が大きくずれている
- アゴの大きさのバランスが悪い
- 顎変形症(がくへんけいしょう)と診断された …など
「顎変形症(がくへんけいしょう)」とは、上下のアゴの大きさや形・位置などの骨格的な異常が原因でアゴが歪み、歯並びが悪くなっている症状を言います。例えば、上あごが成長しすぎて出っ歯になっていたり、下あごが成長しすぎて受け口になっている場合などです。
このように骨格に問題がある場合はアゴの骨切り外科手術が必要になることが多いです。
外科手術が必要かどうかは、目に見えない骨の状況を把握した上で診断する必要があります。そのため自己判断は難しいです。
人によっては、外科矯正が適応と診断されると同時に、普通の矯正でもある程度治せると診断される方もいます。
もし、ご自身が骨切り手術が必要なレベルかどうか、普通の矯正のみだとどうなるのか気になる場合は、外科矯正に対応している矯正歯科クリニックに相談しましょう。
外科矯正はどんな治療?何をするの?
外科矯正治療の流れは以下の通りです。個人差はありますが、トータルで約3~5年ほど治療期間がかかります。
- 初診
- 診査・診断
- 術前矯正(約半年~1年半)※手術が先(サージェリーファースト)の場合には行わないこともあります。
- 顎矯正手術・入院(約2~3週間)
- 術後矯正(約半年~1年半)
- 保定期間(1~2年)
- アゴの骨に装着したプレート除去手術・入院(約1~3週間)※行わない場合もあります
外科矯正では、アゴの骨を切って、アゴを後退させたり前に出すなどの処置を行うことが一般的です。
アゴの骨を切る手術は、全身麻酔によって行いますので、入院が必要となります。上アゴ・下アゴのみか、上下両方か、その他の追加手術の有無などにより費用や治療期間が変わります。
外科矯正の費用
外科手術入院費用が約100万円~200万円ほどかかります。術前・術後の矯正費用は約50万円~100万円ほどかかるため、合計するとおおよそ150万円~300万円ほどになることが多いです。
外科矯正 | ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 | |
治療期間 (保定期間を除く) | 約2~3年 | 約1~3年 | 約1~2年 |
費用 | 約150万円~300万円 (自費診療の場合) | 約60~150万円 | 約10~130万円 |
※これらはあくまで目安であり、治療の期間や費用は個人差があります。
外科矯正は保険診療になる場合も
外科矯正は条件を満たせば保険適用可能となります。例えば、顎変形症(がくへんけいしょう)と診断された場合、歯列矯正のみで歯並びやかみ合わせを治すことが難しく、外科矯正が必要になります。
保険適用で安く済む可能性がありますが、治療方法に制限があります。例えば、矯正器具は銀色の表側ワイヤーしか使えない可能性が高く、矯正器具がかなり目立ちます。ご検討される方は担当医とご相談してみてください。
参考リンク:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 (jos.gr.jp)(外部リンク)
参考:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは|公益社団法人 日本矯正歯科学会
外科矯正のリスク。死亡事故があるって本当?
外科手術は全身麻酔で骨を削るので、手術中に予期せぬ事故が起きるかもしれません。痛みや腫れが引くまでダウンタイムもあります。さらに、術後には合併症が起こる可能性も。
術後のリスク
- しびれ
- 痛み
- 腫れやむくみ
- 内出血
- 組織壊死
- 顔面神経障害
- 骨膜炎
- アレルギーやショック反応
- 睡眠時無呼吸症候群の悪化
- 顔貌が劇的に変化する(噛み合わせ治療を優先するため理想の顔立ちになるとは限りません)
アゴの骨は呼吸器官に近いため出血による窒息が起こることもあり、死亡事故が起きたケースもあります。そのため手術を行うかどうかは慎重に考える必要があります。
関連:かみ合わせ矯正であご手術後、10代女性死亡「管理に改善すべき点」
ダウンタイムもあり、人によっては顔立ちが変わる可能性もあるため、仕事や学校など日常生活との兼ね合いも考慮する必要があります。
外科矯正しないで済む方法はある?
普通の矯正で対応
人によっては外科手術有りでも無しでも矯正できると診断される場合があります。そういった場合は、歯列矯正のみで治療することも可能です。
アンカースクリューを使った矯正
アンカースクリューとは、チタン製の小さなネジの事。歯ぐきに埋め込んで、アゴの骨を支点として歯を引っ張ることが出来ます。
アンカースクリューの登場で、これまでは難しいとされていた歯の動かし方ができるようになり、外科処置が必要だったケースでも歯列矯正のみで対応できるケースも出てきました。
※アンカースクリューの使用は歯科医師の判断によります。
関連記事:矯正用アンカースクリューで何が変わる?歯列矯正を効率的にする秘密をまるごと解説!
カモフラージュ治療
手術をしたほうがいいと診断されたケースで手術をしない選択をした場合、カモフラージュ治療である程度改善を図ることがあります。アゴの大きさの不調和は変えられませんが、歯並びの見た目やかみ合わせの問題を歯列矯正のみで無理やり普通の歯並びのように見せる方法です。
根本的な解決には至らないため、長い目で見たときに顎関節症のリスクが高まるなど問題が起こりやすく、安易にはオススメできません。
外科矯正と普通の矯正の違い
通常の歯列矯正と比べた時の外科矯正の特徴は次の通りです。
- 骨を切る手術がある
- 手術後のダウンタイムがある
- 口元が劇的に変化する
- 手術の前と後の両方で歯列矯正を行う
- 歯列矯正のみの場合よりも期間が長くなる
外科手術では、アゴの骨切り手術を行うので身体や日常生活への負担が大きいです。その分、口元の変化は劇的です。骨格が原因で上手く食事を噛めない方には解決策の一つになるでしょう。
一方で歯列矯正のみで治療するメリットもあります。骨切り手術を受けずに済めば会社や学校の長期休みを取る必要がなく、全身麻酔や外科手術のリスク・後遺症を心配する必要がありません。
また外科矯正は変化が劇的なぶん周囲に驚かれることもありますが、歯列矯正は変化がゆっくりなので周囲の気づかない内に口周りが綺麗になっていた、ということもあります。
ただし、人によって適した治療や変化の度合いは異なります。担当医師と相談した上で治療方針を決めましょう。
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外科矯正と美容整形外科の違い
外科矯正と美容外科の違いを端的にいうと、身体機能の改善が目的の場合は外科矯正、審美面の改善が目的の場合は美容整形外科での治療となります。
外科矯正はあくまでかみ合わせを改善することを目的にした手術です。食事を噛めるようにする、発音しやすくするなど身体機能の改善がメインとなります。
骨切り手術を行うので顔立ちが変わる可能性は大きいですが、噛みあわせの改善を優先して治療するため、期待する顔立ちになるとは限りません。
理想的な顔立ちを目指して骨切り手術を希望される場合は、美容整形外科へ相談しましょう。口元のほか頬や鼻などの変化を希望される場合も、外科矯正ではなく美容整形外科の適応になります。
美容整形外科では、アゴの手術のみで矯正治療を伴わないこともあります。そのため歯列矯正も行う場合は別途費用が必要となります。
まとめ
外科矯正には、全身麻酔やダウンタイムが必要になってくるだけではなく、術後にも後遺症など様々なリスクがあります。手術を受けるメリットとデメリットを考えたときに、どちらが自分にとって比重が大きくなるのか天秤にかけ、じっくり検討することが大切です。
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