「歯の神経の治療」と聞くと、虫歯がひどくなった状態を思い浮かべる人が多いでしょう。
一見関係なさそうに思えますが、実は歯列矯正で歯の神経がダメージを受ける可能性もあるんです。
今回のコラムでは、歯列矯正で歯の神経がダメージを受けるのはどんなときか、神経が死んでしまうのを避けるにはどうしたらよいかを解説します。
歯列矯正で歯の神経が死んでしまうケースは非常にまれですが、こんなはずではなかったと後悔しないよう、治療前に必ず理解しておきましょう。
歯の最も内側には、神経や血管が入っている歯髄(しずい)があります。この神経や血管は歯の根の先(根尖孔)から外へ出て、全身や脳に繋がっているのです。
歯列矯正で歯に力をかけて移動させるということは、これら神経や血管の移動も伴わなければなりません。そのため、歯の移動で生じるさまざまな刺激によって、神経が切れたり炎症を起こしてしまう可能性があるのです。
歯列矯正中に神経が死んでしまうのはどんなとき?
歯列矯正で歯の神経が死んでしまうことはまれですが、特に以下のような場合には、神経が死んでしまうリスクがあります。
歯を大きく動かしたとき
歯列矯正中に歯の神経が死んでしまうケースで多いのが、歯の移動距離が大きいときです。ガタガタや出っ歯の症状が重度の場合には注意が必要。
出っ歯の治療では、小臼歯(前から4または5番目の歯)を抜歯して前歯を大きく後ろに引っ込めることがあります。その際に前歯が内側に傾きすぎてしまうと、神経が痛みやすいです。特に真ん中の前歯に好発します。
関連コラム:出っ歯を矯正すると横顔美人に?私の出っ歯はどうすれば治る?
噛み合わせが強く当たっているとき
歯並びを整えている最中に、一部の上下の歯が強く当たってしまう期間ができることもあります。
特に上下の歯の位置関係が逆になっている部分(交叉咬合)があると、矯正の過程でお互いを乗り越えなければならない場面がでてきます。その際に上下の歯がカツカツと強く当たり、痛みや刺激を感じやすいです。強く当たる期間が長くなると、ごくまれに神経にダメージを受け、死んでしまうケースも。
知覚過敏がひどいとき
矯正治療中には、歯がしみるといった知覚過敏の症状が現れることがあります。歯を動かす過程で一時的に歯と歯ぐきの間にすき間が生じ、そのすき間から刺激が伝わることが主な要因です。
数日で落ち着く場合がほとんどなのであまり心配いりませんが、まれに知覚過敏の症状が強かったり長期間にわたると歯の神経が炎症を起こすこともあります。
特に歯ぐきが下がって歯の根っこの一部が露出してしまっている場合、強い知覚過敏症状が出やすいので注意が必要。
関連コラム:歯列矯正で知覚過敏になるって本当?原因と対策を徹底解説!
虫歯・歯周病が悪化した時
矯正治療に関わらず、歯の神経が死んでしまう原因で最も多いのは、虫歯や歯周病です。虫歯や歯周病が進行して歯髄に細菌が感染すると、歯の神経が炎症を起こして死んでしまうことがあります。
歯列矯正中は装置に汚れがつきやすかったり歯磨きがしづらくなるため、虫歯や歯周病のリスクが上がります。毎日のケアを怠らないように心がけましょう。
歯の神経が死んでしまった時の症状・診断方法
歯の神経の炎症症状には段階があります。
まずごく軽度の「歯髄充血(しずいじゅうけつ)」という段階では、炎症によって歯髄内の血管が拡張しています。この段階ではまだ神経を取らなくても回復の余地があります。
さらに進行すると「歯髄炎(しずいえん)」の状態になり神経がダメージを受けます。細菌感染があると毒素が神経に到達し、神経を取り除かないと治らない状況。
歯髄炎を放置して神経が死んでしまった状態を「歯髄壊死(しずいえし)」といいます。歯の神経が死んでしまうと元に戻ることはありません。歯髄壊死を放置していると、神経が腐ってアゴの骨に膿ができてしまったり、抜歯や骨髄炎に発展するおそれもあるため、ただちに神経の処置が必要です。
それぞれの段階で症状が異なってきますので、以下に解説します。
痛み
歯髄充血の段階では、冷たいものや空気に触れるとしみる程度で、何もしなければあまり痛みを感じないことがほどんど。
歯髄炎になると温かいもので痛みを感じるようになったり、ズキズキとした耐え難い痛みに進行していきます。
その後、歯髄壊死になると痛みを感じる神経が死んでしまうので、痛みがおさまり一見治ったように感じることが多いです。
歯の色
痛みよりも分かりやすいのが歯の色の変化です。
歯髄充血の段階では、他の歯に比べてうっすらグレーがかってきたり、人によってはややピンク色に見える場合も。
歯髄炎、歯髄壊死と進行していくごとにどんどん黒っぽく変色していきます。
歯髄充血の段階で適切な処置をすれば、神経が回復する可能性もあるので、歯の色に少しでも変化を感じたら早めに歯科医院を受診するのがおすすめです。
診断方法
歯の神経が炎症を起こしているか、生きているかといった状態は、以下のような方法を組み合わせて診断していきます。
- 問診、視診
- レントゲン検査
- 温度診(冷たいものや温かいものを当てる)
- 打診(歯をたたく)
- 触診、動揺度検査(歯の揺れ具合をチェックする)
- 電気歯髄診(専用の機械で微量の電流を歯に当てて反応を見る)
歯の神経が死んでしまったらどうする?
歯の神経が死んでしまうと、その後だんだんと腐っていきます(歯髄壊疽)。そのまま放置していると壊死物質や細菌が歯の根の先端(根尖孔)から漏れ出して、歯を支えている骨を溶かして進行していくのです。
ひどくなると抜歯が必要になったり、アゴの骨に炎症(顎骨骨髄炎)が波及して入院治療になるケースも。
重症化しないためにも、違和感を感じた段階で早めに受診するようにしましょう。
歯の神経の治療
歯の神経が死んでしまった場合、まずは神経を取り除くための「根管治療」を行います。専用の道具や薬剤を用いて、神経や細菌感染している部分を数回に分けて清掃・消毒していく治療です。
歯の神経を抜く(抜髄)ときには麻酔をするため、通常痛みを感じることはありません。しかしながら、一部神経が生きていたり、歯ぐきや周りの組織の状態によっては麻酔がききにくいこともあります。また、施術の際の刺激によって治療後に痛みを感じる場合も。
歯の根っこの中(歯髄腔)がキレイになったら、薬剤をつめ、かぶせ物を作る処置を行って完了となります。
歯の神経が死んでしまうのを防ぐ方法
歯や矯正装置のお手入れを欠かさない
歯磨きや矯正装置のお手入れが不十分で虫歯や歯周病になってしまうと、気づいたときには歯髄炎に発展していることもあります。細菌感染を起こしている場合には神経の治療に時間がかかりやすいため、矯正治療が長引いたり、治療計画自体を立て直さないといけなくなる可能性も。
セルフケアはもちろんですが、定期的に歯科医院でクリーニングやチェックを受けるのがおすすめ◎
関連コラム:矯正用マウスピースの正しいお手入れ方法!臭いや変色が出た時の対策もご紹介
すぐに相談する
歯の神経の炎症のうち、ごく軽度の歯髄充血の段階では、矯正力を弱めるなど適切な処置を行えば、回復することもあります。
ですので、歯の色の変化や歯がしみるなど、些細な違和感を感じたらなるべくすぐに歯科医師に診てもらうようにしましょう。
専門的な知識と経験のある歯科医を選ぶ
歯列矯正で歯髄壊死を起こすかどうか、治療前に判断することは難しいです。しかしながら、そのようなリスクがあることを知識として十分に理解し、慎重に治療計画を立ててくれる歯科医師を選びましょう。
近年では、治療計画をAIシステムが算出してくれるものもありますが、歯や周りの組織にとって負担の大きい動きになっている場合も。AIの分析を鵜呑みにせず、細かい調整を行うことのできる専門性が必要になります。
また、治療のメリットだけでなくデメリットやリスクについても正しく説明してくれることや、気軽に相談しやすい雰囲気かどうかも大切。神経の治療は一般歯科の範疇になりますので、矯正クリニックで行うのか連携先があるのかなど、一般歯科治療が必要になったときの対応についても確認しておくと◎
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インタビュー・体験談
よくある質問
矯正以外で歯の神経が死ぬときは?
歯をぶつけた(外傷)
転んだりぶつけたりして歯に強い衝撃があると、神経や血管が損傷することがあります。ぶつけて数か月後に神経が死んで歯が黒ずんでくる場合も。
また、細菌感染を起こすと膿がたまって歯ぐきが腫れてくることがありますので、歯を強くぶつけて痛みが続く場合には、早めに歯科医院を受診することがおすすめです。
中心結節の破折
「中心結節」とは、歯の形態異常の一つで、小臼歯(前から4、5番目の歯)の噛む面にできた突起のことです。中心結節はその内側すぐのところに歯髄があるため、噛んだ時などに折れてしまうと神経がむき出しになり、歯髄壊死を引き起こす可能性が高いです。
そのため中心結節が見つかった場合にはすぐに歯科医院を受診し、補強をしてもらったり、定期的に少しずつ削って様子を見ていく必要があります。
神経を抜いた歯でも矯正できる?
過去の虫歯などで神経を抜いてしまっている歯があっても、歯の根の周りにある歯根膜という組織に問題がなければ歯列矯正を行うことができます。
ただし、以下の注意点があります。
- ワイヤー矯正の場合、かぶせ物の上に装置をつけるとはずれやすい
- 矯正治療終了後にかぶせ物を作り直す可能性
- ブリッジの場合、矯正治療前に切断して治療後に作り直しが必要になる可能性
- ごくまれに歯根が割れてしまう(歯根破折)可能性
- 過去に強い衝撃を受けた歯は、アンキローシス(骨性癒着)という状態になっていると歯が動かないことがある
神経を抜いた歯は非常にもろく、虫歯が進行しやすいため、歯科医師と十分に話し合って治療方針を決めていく必要があります。状況によっては予め抜歯を選択することも。
まとめ
歯列矯正中に歯を動かす力や虫歯などが原因で、歯の神経がダメージを受け死んでしまうこともあります。
可能性としては非常にまれですが、治療前に予測することが難しいため、リスクのある歯は慎重に治療を進めることが必要。
また、ご自身でも丁寧なケアはもちろん定期的に歯科医院で清掃状態をチェックしてもらいましょう。
心配がある方は、矯正治療を始める前に十分相談しておくことがおすすめです。アットスマイル矯正では、初回カウンセリングを無料で受けることができます。疑問点や気になることをクリアにして、納得した上で治療に臨めるよう、ぜひこの機会をご活用ください。
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※千円以下の端数がある場合は、切り上げています。
※費用は治療当時の料金となります。
※自由診療となり保険は適用されません。
※歯並びによってはマウスピースによる治療が出来ない場合があります。
主なリスクと補足事項:
・歯の動きやすさには個人差があります。
・正しい装着方法で決められた時間以上装着しない場合は治療期間が長くなる可能性があります。
・咬合、歯肉退縮、歯根吸収等が発生する可能性があります。
・矯正箇所が元に戻る(後戻り)場合がありますので、治療完了後は後戻りを防ぐため、保定装置の装着が必要になります。
・装置装着後と通院における装置調整後は1~3日ほど痛みを伴うことがあります。
・歯の移動が大きい症例などには不向きです。
アットスマイル矯正を受けた人の声
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