歯の矯正(歯列矯正)した方がいい?
子どもの歯並びで気になったら相談すべき?
子どもの歯が生えてくると、その並び方が気になる保護者の方は少なくありません。
乳歯は生後6から9か月ごろに下の真ん中の2本から生え始め、2歳半ごろに奥歯が生えて乳歯列が完成します。この時期に歯並びが気になっても、すぐに矯正が必要とは限りません。
ただし、見過ごせないサインもあります。歯並びやかみ合わせに問題があると、将来の健康や発音、見た目に影響する可能性があるためです。
乳歯の段階から気をつけたい歯並びのサイン
乳歯の時期には、実は隙間がある方が望ましいとされています。乳歯と永久歯を比べると、乳歯の方が小さく、永久歯が適切に生えるためには隙間が必要です。この隙間は発育空隙と呼ばれ、6歳頃までの間はあった方が良いとされています。
反対に、5から6歳頃になっても歯と歯の間に隙間がない場合は注意が必要です。永久歯が生えるスペースが不足し、将来歯並びが乱れるリスクが高まります。
また、受け口などの歯並びは遺伝的要因があり、保護者が受け口であればお子さんもその可能性が高くなります。
歯医者に相談するタイミング
歯並びが気になったら、早めに相談することをおすすめします。
子どもは成長発育をしているため、上下のあごの骨のバランスを整えやすく、あごの骨やその他の発達に影響を及ぼすような症例は子どものときから歯科矯正治療を開始した方が良い場合があります。
乳歯が生えそろう3歳ごろまで様子を見て、自然に治らないときには小児歯科の専門医に相談することが推奨されます。
定期的に歯科検診を受けることで、適切な時期を逃さずに対応できます。
歯列矯正が必要な子どもの特徴
すべての歯並びの問題で矯正が必要になるわけではありません。ここでは、矯正治療を検討すべき代表的な症例について説明します。
受け口や出っ歯などかみ合わせの問題
かみ合わせの問題は、見た目だけでなく食事や発音にも影響します。代表的な症例をいくつかご紹介します。
受け口(反対咬合)の特徴下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を受け口、または反対咬合と呼びます。
2歳くらいまでだと約50パーセントは自然に治るといわれていますが、3歳を過ぎても受け口のままだと自然に治る可能性は低くなります。
あごの成長を利用して骨格を整えるためには男女ともに7歳くらいまでには治療を開始することが望ましいとされています。放置すると、噛み方や発音に影響が出る恐れがあります。
出っ歯(上顎前突)の特徴
上の前歯が下の前歯よりも大きく前方にある状態を出っ歯、または上顎前突と言います。
口元が膨らんで見える原因になることもあり、前歯がぶつかりやすく怪我のリスクも高まります。指しゃぶりや口呼吸などの癖が原因になることが多いです。
開咬(かみ合わせの隙間)の特徴
奥歯を自然に噛んだとき、前歯の上下の間に垂直方向の隙間がある状態を開咬と言います。
前歯で食べ物を噛み切ることが難しく、発音にも影響が出やすい症例です。舌を突き出す癖や長期的な指しゃぶりが原因になることがあります。
歯が重なって生えているガタガタの歯並び
歯が重なり合ってガタガタに生えている状態を叢生と呼びます。
あごが小さく、歯が並ぶスペースが不足していることが主な原因です。歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まる問題があります。
乳歯の段階でガタガタの場合、永久歯への生え変わりのタイミングで状態が悪化する恐れがあるため、早めの相談が推奨されます。
指しゃぶりや口呼吸などの癖がある場合
指しゃぶり、口呼吸、舌を突き出す癖、頬杖、うつ伏せ寝などの生活習慣が歯並びやかみ合わせに影響を及ぼすことがわかっています。
特に3歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合、歯並びに悪影響を及ぼす恐れがあります。おしゃぶりは2歳を過ぎまでにはやめられるとよいとされています。
口呼吸は口の中を乾燥させ、虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、歯並びの乱れの原因にもなります。
子どもの矯正治療を始める時期
子どもの矯正治療には適切な開始時期があります。あごの成長段階を利用できるかどうかで、治療の内容や効果が大きく変わってきます。
第1期治療は6歳から12歳ごろが目安第1期治療では、将来大人の歯がきれいに生えそろうように、顎を適切な成長へと導く治療を行います。混合歯列期は顎がいちばん成長する時期で、一般的にこの時期に第1期治療を始める子どもが多いとされています。
第1期治療が終わるまでにかかる期間の目安は10か月から1年半程度です。治療終了後、第2期治療を始めるまで数年間経過観察することもあります。
第2期治療は永久歯が生えそろってから
第2期治療では大人の歯の歯並びや噛み合わせを整える治療を行います。治療内容は成人矯正と同じで、第2期治療が終わるまでにかかる期間の目安は1年半から2年半程度です。
第1期治療で土台を整えていた場合、第2期治療が不要になることや、治療期間が短くなることがあります。
早めに相談するメリット
子どもは成長発育をしているので、上下のあごの骨のバランスを整えやすく、指しゃぶりや口呼吸などの口に関するさまざまな癖を改善させて、食べ物をかみ砕いて飲み込んだり、話をしたりする口の機能の発達を高めることが可能になります。
また、症例によっては、歯が生えるスペースを確保して歯を抜かないですむ場合もあります。
早めに相談することで、最適な治療開始時期を逃さず、お子さんに合った治療計画を立てることができます。
子どものうちに矯正するメリットとデメリット
矯正治療には多くのメリットがありますが、デメリットも理解しておく必要があります。
あごの成長を利用できるメリット
子どものうちに矯正治療を始める最大のメリットは、あごの成長を利用できることです。
成長期のあごは柔らかく、歯やあごを矯正しやすい状態にあります。治療期間も、永久歯に生えそろって骨も固まってしまった大人に比べると短くなる傾向があります。
抜歯せずに済む可能性が高い
あごの成長を促すことで、永久歯が生えるスペースを確保できる可能性が高まります。
その結果、歯を抜かなくても歯並びを整えられるケースが増えます。大人になってからの矯正では、スペース不足を解消するために抜歯が必要になることが多いです。
治療期間が短くなりやすい
成長期の骨は柔らかく、歯が動きやすい状態です。
そのため、大人の矯正に比べて治療期間が短くなる傾向があります。また、第1期治療で土台を整えておくことで、第2期治療が不要になったり、簡単な治療で済んだりすることもあります。
費用や期間の負担を考えるデメリット
矯正治療にはいくつかのデメリットもあります。
治療期間は比較的長く、第1期治療と第2期治療を合わせると数年単位になることがあります。その間、定期的な通院が必要です。
装置の見た目が気になる場合がある
矯正装置を装着することで、見た目が気になるお子さんもいます。
特に思春期に差し掛かると、外見を気にするようになる時期です。ただし、最近では目立ちにくいマウスピース型の矯正装置もあり、選択肢が広がっています。
通院の手間がかかる
矯正治療中は、定期的な通院が必要です。
装置の調整や経過観察のため、月に1回程度の通院が一般的です。保護者の方の送り迎えや時間の確保が必要になります。
矯正治療の種類と費用の目安
子どもの矯正治療にはいくつかの種類があります。それぞれの特徴と費用について説明します。
取り外しできる矯正装置
取り外しができる矯正装置は、主に第1期治療で使用されます。
マウスピース型の装置や、床矯正装置などがあります。基本的に装着時間は寝ている間の8時間程度と、家で生活している間の数時間です。
学校にいる間や外出時には外していられるため、お子さんが人目を気にしてストレスを感じる心配が少なくなります。ただし、装着時間を守らないと期待する効果が出ません。
固定式の矯正装置
固定式の矯正装置は、取り外すことができない装置です。
第2期治療で使用されることが多く、より確実に歯を動かすことができます。
ワイヤー矯正の特徴
歯の表面にブラケットという装置を取り付け、ワイヤーをとおして適切な力をかけて歯を少しずつ移動させます。
確実に歯を動かせる方法ですが、装置が目立つことや、歯磨きがしにくいというデメリットがあります。
マウスピース矯正の特徴
透明なマウスピースを装着して歯を少しずつ移動させます。
1から2週間ごとにマウスピースを交換しながら矯正を進めます。目立ちにくく、取り外しができるため食事や歯磨きがしやすいメリットがあります。
治療にかかる費用の目安
歯科矯正治療の費用は自由診療のため歯科医院によって様々です。一般的には、乳歯列期の料金は3万円から20万円、混合歯列期の料金は15万円から60万円、永久歯列期の料金は50万円から130万円とかなり幅があります。
子どもの歯のときから治療を開始して大人の歯に交換していく場合は、料金の調整をしている医院が大多数です。
また、歯科医院によっては、通院ごとに調整料を算定する場合もあるため、よく確かめてから契約することが大切です。
お子さんの歯並びや歯列矯正について気になることがあれば、早めに歯科医院に相談することをおすすめします。
子どもの成長段階に合わせた適切な治療を受けることで、将来的な歯並びの問題を予防し、健康的な口腔環境を整えることができます。
参考元:
- 日本小児歯科学会「産まれてから2歳頃まで」 https://www.jspd.or.jp/question/2years_old/
- 日本小児歯科学会「子どもたちの歯並び・かみ合わせの治療に関するQ&A」 https://www.jspd.or.jp/question/qa/
- インビザラインジャパン「子どもの歯列矯正と基礎知識」 https://www.invisalignjapan.co.jp/consumer/blog/child
- 東京日本橋エムアンドアソシエイツ矯正歯科「子どもの受け口(反対咬合)の治療はいつから開始すべき?」 https://maaortho.com/column/timing.html